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金縛りはなぜ起こる?睡眠専門医に聞く原因と対処法を解説!

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金縛りはなぜ起こる?睡眠専門医に聞く原因と対処法を解説!
寝ているときに突如訪れる金縛り!体が硬直して動けなくなり、恐る恐る目を開けると知らない人が体に乗っていた、とか、死んだはずのおばあちゃんが話しかけてきた…。なんて怖い経験をした方も多いのでは?

心霊体験として語られることの多い金縛りですが、医学的視点から見るとどんな現象なのでしょうか?その答えを教えてくれるのは、睡眠の面から心身の健康をサポートしてくれる『青山・表参道 睡眠ストレスクリニック』院長の中村真樹先生です。
 

霊的現象ではない!金縛り中の体はどんな状態?


━寝ているときに体が動かなくなる金縛りは、どんな現象ですか?

中村先生:医学用語で“睡眠麻痺”と呼ばれる現象で、一般的に30〜40%の人が一生に1回は経験していると言われています。睡眠は、大脳を休息させる「ノンレム睡眠」と、身体は休んでいるが、脳は活発に働いている「レム睡眠」が一晩の間に交互に訪れます。レム睡眠中は全身の筋肉が弛緩していて力が入らない状態なのですが、このときに突然脳だけが目覚めると“睡眠麻痺”が起こるのです。

━金縛りは“睡眠麻痺”という症状なんですね。でも、死んだ人の声が聞こえたり、胸のところに人が座っていて息苦しいこともあったのですが…。

中村先生:“睡眠麻痺”が起こるレム睡眠中は夢を見ていることが多いです。つまり、死んだ人の声や知らない人が見える現象は「夢」を見ている状態なんです。レム睡眠中は筋肉を動かせない状態なので、意識的な深呼吸もできません。そのため、「体を押さえつけられて動かせない」「誰かが胸に乗っていて息苦しい!」と感じるのでしょう。また、瞼(まぶた)を開く筋肉も動かせないので、目を開くことはできません。何かを見ているような気がしても、全て夢の中の出来事なのです。ちなみに、レム睡眠時は感情情報の処理に関わる脳の扁桃体(へんとうたい)という部分の活動が活発になります。この扁桃体は“恐怖、不安”という感情をコントロールする部分でもあるので、“睡眠麻痺”中に見ている夢は怖いものが多いと言われています。
 
金縛りの症状
● 体が動かせない
● 耳鳴りがする
● 息苦しさを感じる
● 目が開かず、声も出ない

━金縛りは科学では解明できないオカルト現象だと思っていましたが、そうではなかったんですね。

中村先生:夢を壊すようで申し訳ないのですが(笑)、金縛りは医学的に説明ができるんです。ただ、古今東西どんな国でも金縛りは“心霊現象”として語り継がれてきました。文化や風土が違っても、体の中で起きている現象は同じです。どの時代、どこの国でも亡霊や悪魔の仕業だと信じられてきたというのは、おもしろいですよね。
 

こんな人は金縛りにご用心!


━30〜40%の人が1度は金縛りになるそうですが、金縛りになりやすい人はどんな人ですか?

中村先生:年齢は10〜20代の若い世代に多く、性差はないと言われています。また、遺伝が影響するとも言われているので、家族に金縛りになりやすい人がいる場合はご自身も金縛りになりやすい体質かもしれません。

━金縛りはどんなときになりやすいのでしょうか?

中村先生:“睡眠麻痺”は規則正しく出現するはずのレム睡眠が崩れて出現してしまうと起こると考えられています。専門的には「乖離したREM睡眠」と言います。レム睡眠の出現のズレは、不規則な生活&睡眠、細切れの睡眠、精神的なストレスや過労によって起こります。つまり、心身ともに疲弊ししっかりと眠れていないと金縛りは起きやすいのです。私も病院勤務時代、当直時に金縛りになることがありました…。うとうと仮眠していたとき、呼び出しコールが鳴ったから「行かなくちゃ!」と起き上がろうとするのですが、どうしても体が動かない。実は“睡眠麻痺”の状態で、コールも鳴っていなかったんですよね。

━先生も金縛りになっていたんですね!ちなみに睡眠障害が影響することもあるのでしょうか?

中村先生:睡眠・覚醒維持に関わる脳機能の障害で起こるとされる過眠症「ナルコレプシー」患者の20〜60%に“睡眠麻痺”が発症すると言われています。また、ナルコレプシー以外に、過眠症状は無いのに頻繁に“睡眠麻痺”が発症する場合は「反復性孤発性睡眠麻痺」と診断される場合もあります。頻繁に“睡眠麻痺”が起きてしまうなど、日常生活に支障をきたして苦痛を感じるようなら、一度専門医に相談するようにしてください。

 
金縛りの原因

①不規則な生活・睡眠


夜更かしや朝寝坊、平日と休日の睡眠時間に差があるなど不規則な生活を送っていると、睡眠リズムが乱れ、睡眠の質を下げる原因に。そうすると、レム睡眠とノンレム睡眠のサイクルが崩れ、金縛りの症状が起きやすくなってしまいます。

②睡眠の質の低下


就寝前にスマートフォンを操作することや寝室が適温ではないこと、へたった寝具で寝ている…。これら全ては睡眠の質を下げることに直結し、結果として金縛りを引き起こす原因になります。

③精神的なストレス


ストレスや不安も、金縛りを引き起こす原因の一つです。精神的・肉体的ストレスを感じたまま寝ようとしても、自律神経が乱れているため眠りづらい状態に。布団の中でネガティブなことを考えるのはNGです。

④過労


長時間労働は、大切な睡眠時間を削ることに。睡眠時間が十分でないと、疲れが取れないばかりかそれ自体がストレスになったり、睡眠リズムを見出したりと、結果として金縛りの原因となる状態に陥ってしまいます。

⑤睡眠障害


前述したように過眠症「ナルコレプシー」の症状として“睡眠麻痺”が発症することがあります。“睡眠麻痺”が頻繁に起こる際には、睡眠障害を疑い、医療機関を受診することをおすすめします。
 

金縛りにならないために気をつけることは?対処法と予防法 


━もし金縛りになってしまったらどうすればいいのでしょうか?

中村先生:“睡眠麻痺”は数秒から数分ほどで治ります。金縛り中は焦って長く感じると思いますが、実はすごく短いんです。意識的に深呼吸をするのは難しいですが、落ち着いて呼吸をゆっくりと行えば、自然と解消されます。その後は、すっきりと目覚めるか、そのまま寝てしまうこともあります。いずれにせよリラックスしていれば元通りになるので心配いりません。

━焦らないことが重要ですね。では、金縛りを未然に防ぐにはどうしたらいいですか?

中村先生:“睡眠麻痺”は規則的なノンレム睡眠とレム睡眠の周期のズレが原因です。睡眠のリズムが整えば“睡眠麻痺”は発症しにくくなります。規則正しい生活を送り、ストレスマネジメントを行うことを意識してください!

 
金縛りの対処法・予防策

①落ち着いて深呼吸


金縛りになってしまったら、無理に体を動かそうとせずまずは深呼吸!そうすると自然に金縛りの状態は解消されていきます。

②生活リズムを整える


毎日の生活習慣を見直すことが第一歩。
● 早寝早起きを心がける
● 起きたら日の光を浴びる
● 朝食を取る
● 適度な運動を行う
など、健康的な生活を送ることで金縛りの予防になります。

③睡眠の質を高める


就寝の1時間前には湯船に使ってリラックスする、寝る前にはスマートフォンなどブルーライトを発するものは見ない、寝室を適温に保って自分に合った寝具で寝る、などは快眠を得るための大切なポイントです。
睡眠の質を高める方法は眠りのレシピでもたくさんご紹介しているので、ぜひ他の記事もチェックしてみてくださいね。

④ストレスをため込まない


ストレスは睡眠の天敵!ストレスを感じたらその日のうちに発散し、お布団に入るときには「寝るだけ」の状態になることが大切です。
日常の中でストレスを解消するなら、運動や趣味などの方法もありますが、お風呂でヘッドマッサージをすることもおすすめです。
▶︎自律神経の乱れに効くヘッドマッサージ!ストレスを和らげてぐっすり眠れる方法を紹介

⑤頻繁に起こるときには医療機関へ!


対策をしても頻繁に金縛りになってしまうという場合には、何らかの睡眠障害が原因であることも。睡眠外来で適切な診断を受けることをおすすめします。
 

もう金縛りは怖くない!


オカルト現象だと思っていた金縛りは、睡眠サイクルのズレやストレス過多などが原因でした。金縛り中に聞こえた声や人の姿は夢だった…。というのはちょっと寂しいような気もしますが、怖い体験はしたくないので、睡眠と生活リズムを整えて金縛りにならないように心がけましょう!


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青山・表参道 睡眠ストレスクリニック院長

中村真樹先生

日本睡眠学会専門医。東北大学大学院医学系研究科修了後、東北大学病院精神科で助教、外来医長を務める。その後、睡眠総合ケアクリニック代々木院長を経て、2017年「青山・表参道 睡眠ストレスクリニック」を開院。臨床と研究、両面の実績があり、睡眠に悩む多くの患者さんの治療にあたっている。ビジネスパーソン向けの書籍『仕事が冴える眠活法』(三笠書房)も話題に。
https://omotesando-sleep.com/

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